二次電池の特性評価をもっと身近に
電池スタンドは汎用の電源装置及び電子負荷装置、温度センサーで構成された二次電池の電気的特性を評価するシステムです。
日々使うことを意識し、簡単かつ安全で正確な評価ができるように設計しました。
電圧は0Vから35V/80V/120V(500W)まで対応しており、単電池の評価のほか、組電池のセルバランス調整、最終的に組み上げた組電池の充電及び放電評価まで幅広く対応しています。
基本の充電方式である-ΔV 充電、CCCV 充電が行えますので、主要二次電池であるニカド蓄電池(Ni-Cd)、ニッケル水素蓄電池 (Ni-MH)、リチウムイオン蓄電池(Li-Ion)、鉛蓄電池(Pb)の評価に使用できます。
二次電池の再生 再生の記録、品質記録の効率化
二次電池は電気を蓄えて持ち運べる電池としての特徴に加え、充電して繰り返し使えるという利点を活かし、携帯電話やノートパソコン、電動自転車など、身近なものにたくさん使われています。この先も電気自動車や非常用電源設備の普及に伴い、二次電池の需要は更に拡大していきますが、希少金属をたくさん使用している二次電池はリサイクルについても真剣に考えなければなりません。
使用済みの二次電池を回収し素材に戻すリサイクル事業は法律で義務化されており、適切な再資源化が行われています。さらに昨今では、太陽電池や電気自動車などの急速な普及の影響によって近い将来、2032年あたりには二次電池の廃棄が大量に発生することが懸念されており、現在、太陽電池及び二次電池のリユース(Reuse)、リデュース(Reduce)に向けた取り組みが国内外で活発化しています。
二次電池は適切な充放電を行うことでまだまだ使用できる可能性があります。
二次電池を正しく扱い、長く使用することでリユース(Reuse)、リデュース(Reduce)に繋がり、廃棄物の削減、地球温暖化の抑制につながり、さらには経費削減にもなります。
二次電池再生ビジネスの発展に伴い、それを促進するためには、二次電池の品質評価を安全に行うことの他、確実な記録及び報告書作成の自動化が必要と考えました。その社会的ニーズを後押しし、そのニーズにより応えるため、以下の点を中心に電池スタンドは開発されました。
1. 試験装置の構造をシンプルにし、多くの種類の電池に幅広く対応できる拡張性を持つこと
2. 二次電池の品質記録をすぐに使える報告書の形として自動生成する機能を持つこと
3. 電池の管理に欠かせない温度を測定して安全性と記録の正確性の向上を図ること
基本に忠実に
電池スタンドはプロフェッショナルな知識がなくても二次電池の評価を行えるように、高度で複雑な機能は省き、基本的な機能に絞りました。
機能は絞っていますが、公的な規格で定められている特性評価はしっかりと行えるようにしています。
充電用電源、放電用電子負荷装置、セル表面温度計はそれぞれのセル専用に用意され、独立した制御、測定を実施し相互干渉が発生しないようにしています。これによりセル本来の正確な測定値を得られるように設計しています。
試験規格については二次電池は、様々な製造業者が提供する二次電池の性能を評価するための一連の基準をJIS規格で定めています。
公的な規格に従って二次電池の評価を行うことで、品質が適正であるかを客観的に判断することができます。
電池スタンドでは以下の規格を参考にしています。
参考規格
JIS C8705(2012) 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池
IEC61951-1:2006 Secondary cells and batteries containing alkaline of other non-acid electrolytes-Portable sealed rechargeable single cells-Part 1: Nickel-cadmium (MOD)
JIS C8708(2013) 密閉形ニッケル・水素蓄電池
IEC 61951-2:2011 Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes-Portable sealed rechargeable single cells-Part 2: Nickel-metal hydride (MOD)
JIS C8711(2013) ポータブル機器用リチウム二次電池
IEC 61960:2011 Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes-Secondary lithium cells and batteries for portable applications (MOD)
基本に特化した 充電・放電制御
電池スタンドでは、放電は定電流、定抵抗、定電力の3種類、充電は-ΔV方式とCCCV方式の2種類での評価を行えます。
耐久性を知る サイクル特性
電池スタンドでは、簡単な設定で充放電を繰り返し行うことができます。JIS規格で定められたサイクル特性評価のほか、メモリー効果解消にも有効な機能です。
劣化を知る 内部抵抗測定
JIS規格の内部抵抗測定は交流法と直流法の2種類の測定方法を定義しています。交流法は追加の機材が必要となることと、測定原理を理解していないと測定値に誤差が生じてしまうことから、電池スタンドでは追加の機材を必要とせず、人による測定誤差が生じにくい直流法を採用しました。
JIS規格で定められた特性評価のほか、放電試験と平行して繰り返し一定間隔で内部抵抗を測定するオリジナルの機能を入れました。
これを使うことで満充電から放電終了までの内部抵抗の変化を見ることもできます。
<直流内部抵抗の測定の流れ>
電池を放電電流 I1 の一定電流で放電。T1 時間後、放電電圧 U1 を測定して記録する。その後、直ちに放電電流 I2 の一定電流で放電。
T2 時間後、放電電圧 U2 を測定して記録する。
直流内部抵抗 Rdc は、次の式によって求める。
日々使いやすく
電池スタンドは、日々の作業の負担を減らせるよう随所に効率よく作業を行うための設計を施しています。
報告書は1分で完成
電池スタンドでは、メインである充電・放電制御のみならず、記録データの扱われ方にも着目しました。
データはCSV形式のファイルで保存されますが、通常はそのまま使用されることはなく、決められた形式の報告書にまとめられます。
報告書の作成はデータの転記やグラフの生成、コメント入力などの作業を行うため、多くの時間と労力を必要とします。
そこで、電池スタンドは記録したデータを報告書の形で自動的に出力する機能を実装しました。記録データを選択するだけであっという間に報告書が完成します。
なお、報告書の形はお客様によって変わります。そのため報告書のフォーマットはお客様独自のものを採用できるようにしました。
これにより、面倒な報告書の作成作業を必要せずに短時間で評価した電池と一緒に管理できるようになります。
接続が簡単で交換もできる電池接続クリップ
電池の端子への接続が容易で交換も可能な大型のクリップを採用しています。クリップは使っていくうちに傷んできますので交換が行えるようにしました。また、電池の端子形状に合わせて別の形のクリップを使用することもできます。
電池を置く場所、用意しています
電池スタンドでは、評価する電池を置く場所も用意しています。
電池設置プレートはスライド式で作業するときは引き出し、試験するときは収納することができるため、ムダに場所を取りません。
また、電池への傷や落下およびラックとの干渉防止のため、設置面には電池をやさしく守るクッションラバーを貼っています。
頑丈で移動も楽なキャスター付きラック
ラックユニットには大型のキャスターが付いているため、作業工程が入れ替わるときや電池スタンドの場所を変える必要があるときに楽に移動できます。
独自グラフィックで試験状態が一目で分かる
画面は日々見るものだから、デザインやフォント、文字の大きさ、色にもこだわりました。
視認性の高いグラフィックも独自に製作し、試験状態を瞬時に把握できるように配慮しています。
レシピを使っていつもの試験をもっと楽に
レシピとは試験設定に名前を付けて管理し、名前を選択するだけでその試験設定を繰り返し使用できるようにする機能です。
試験設定の入力は手間のかかる作業です。決まった試験はレシピに登録しておくことでソフトウェアの起動からわずか数クリックで試験を開始できます。
大事な校正作業はお客様自身でもできます
正確な数値で充放電を行うためには、1年に一度は装置の校正を行う必要があります。これは電池スタンドに限らず、他の充放電装置でも同じです。
通常は装置をメーカーに送って校正を実施してもらう「引き取り校正」を行うことになりますが、これには多くの時間と手間がかかります。
電池スタンドでは、基準となるデジタルマルチメーターを用意すれば、お客様ご自身で直流電源装置と電子負荷装置の校正を実施することができます。もちろん、引き取り校正サービスも承っております。
引き取り校正の場合、校正費用と1週間程度の期間が必要となります。
安心できる評価を
二次電池の中には取り扱いを誤ると、大きな事故に至るものもあります。そのため安全で正確な評価を実現するための機能を組み込みました。
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安全と正確な評価に必要な 温度測定
電池は充電・放電を行うと発熱します。そして、過度の充電・放電を行うと高温になり最悪の場合、破裂や発火に至ります。
事故を防ぎ、安全に充電・放電を行うには温度の測定は絶対に欠かせません。
また、電池は環境温度によって特性が変わるため、正確な評価には環境温度の測定も不可欠です。
そのため、電池スタンドでは電池温度および環境温度の測定を標準で搭載しています。
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工業レベルの 安全機能
二次電池の評価には長い時間を必要とするため、無人になることもあります。
充電・放電という長い作業において停電等による問題が起きても安全にシステムを停止できる回路を入れています。
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電圧降下を意識した 配線設計
意外と見落としてしまうのが電圧降下です。適切でないケーブルを使ったり、間違った接続を行ったりすると電圧降下が起こり、正しい評価は行えません。
電池スタンドでは、適切な太さと長さのケーブルを採用し、配線にも気を配っています。
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汎用品を選択
電池スタンドは、専用のハードウェアを開発せず、汎用の直流電源装置、電子負荷装置を採用することで中核となるハードウェアコストを抑制しました。また、直流電源装置と電子負荷装置は複数のモデルから選択が可能で、二次電池の種類に応じたシステムの仕様変更に柔軟に対応できるようにしています。
自由に組み替えができる
二次電池の種類及び様々な条件の試験に対応できるよう直流電源装置は3モデル、電子負荷装置は4モデルから選べます。
直流電源装置および電子負荷装置はいつでも組み替えることができます。
別の用途にも使用できる
直流電源装置および電子負荷装置は単体でも使用できます。
直流電源装置は負荷の評価や臨時の電源として、電子負荷装置は電源の評価や過渡応答試験などに使用できます。
コストの圧縮
汎用品を使用することで様々なコストを圧縮しました。
単電池から組電池までカバー
単電池評価のほか、組電池のセルバランス調整、最終的に組上げた組電池の評価まで幅広く対応しています。
届いてすぐに使えます
電池スタンドはラックユニットの配線からパソコンのセットアップまですべて行って引き渡します。
機器およびパソコンの設定などを行う必要はありません。一次電源を接続し、評価する電池をセットすれば、すぐに使えます。
なお、一次側の電源ケーブルの用意とラックまでの引き回しについては工場の電気工事が必要となる場合があるため、通常はお客様で用意していただいております。ただし、ケーブルの手配や末端加工など、こちらで対応できることもございますので、お気軽にご相談ください。
セミオーダーでより使いやすく
ハードウェアのアッセンブリ及びソフトウェアはすべて自社で設計・製作・デバッグを行っています。
このため、機能の追加や構成の変更など、お客様のご希望に合わせた独自の電池スタンドをお届けできるようにしています。
仕様
電池スタンドは1システムで最大4chまでユニットの増設ができます。下記は4chの仕様になります。
一般仕様
実装品・付属品
ラック外観
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